タンザニア北部、アフリカ大陸最高峰キリマンジャロ山の麓にある街、モシは、タンザニア国内でも観光業が盛んで、比較的大きな街と言えます。観光客や在住外国人も多く、貧富の差の激しい街のひとつでもあります。
モシまで行けば何とかなる、という気持ちもあるのでしょうか、ここモシにも多くのストリートで暮らす子供たちがいます。両親をエイズ等で亡くし、身よりのない子、親戚に引き取られたけれど、一家の生活に余裕がないためにひどい扱いをされ逃げ出した子、両親とも健在だけれど、親が暴力を振るったり、酒癖が悪かったりで逃げ出した子、親に捨てられた子、様々な理由で、子供たちは街に出てきます。
実際、街に出てくると、お金持ちのタンザニア人や、外国人に物乞いすることで、お金を手にしてしまう子供たち。そして子供たちは、そのお金でテレビを見に行ったり、無駄遣いをしたり、時にはタバコやお酒を学んでしまったりもするのです。善意をもってした行いが、時に子供たちがストリートの生活から抜け出せなくなる原因となってしまうこともあるのです。
ストリートチルドレンの多いモシには、彼らを支援する施設が、私の知る限り4つ存在します。それらの施設では、衣食住を子供たちに提供し、学校に通う支援をしています。
しかし、施設はどこもパンク状態、受け入れをストップしている施設がほとんどです。
受け入れ制限をしていない施設は、ひとつのベッドに3,4人が寝る等、かなり厳しい状況です。そしてストリートに浸かってしまった子供たちは、規則のある施設に馴染めずに逃げ出してしまいます。何度も逃げ出す手に負えないとされた子供たちは、次にこの施設に行っても追い出されてしまいます。他の子供たちに悪影響を与えてしまうからです。
こうして街に残る子供たちと、新しく出てくる子供たちで、モシの街にはストリートで暮らす子供たちが今も増え続けています。
ストリートの生活はひどいものです。
日中は物乞いやスクラップを拾って売っている子供たち。毎日きちんと食事がとれることは稀ですし、スクラップを拾っている間にゴミの穴の下で燃える炎に気付かず大火傷を負った子、ゴミの中に入ることであちこち傷だらけになった子供を私は見ました。そしてストリートで暮らすことは、タンザニア人からも差別を受けます。中学生に石を投げられた子、酔っぱらいに突然殴られた子に私は出会いました。
そして夜です。彼らは大抵仲間同士で、市場の小屋や、バススタンド、時には排水溝の中に身を寄せ合って眠ります。怖いからです。子供たちは、夜中に大人に暴力を振るわれたり、乱暴されたりするのです。どんなに寒くても、拾った麻袋に身をくるんで身を寄せ合って眠るしかない彼らに、安眠はありません。
ストリートの生活には、自由に使えるお金があっても、叱ってくれる大人や、守ってくれる大人がいないのです。まだ小さい子供たちが、お腹が減っても、怪我をしても、病気になっても、夜ゆっくり眠りたくても、頼る大人も、帰れる家もないのです。 そして、ストリートに止まれば止まるほど、将来の夢を見ることも出来なくなってしまいます。
これが、モシのストリートチルドレンの現状です。