Chemchem ya Amani TANZANIA

 

シリと子ども達

 初めてRashidiたちと話をした日、シリというベルギー人の女性も一緒でした。そのときRashidiたちも彼女と知り合ってまだ2週間程だと言っていました。

 彼女は最近タンザニアに来たばかりで、モシにあるキリマンジャロのポーターを支援するNGOで、ポーターに英語を教えるためにやってきました。本来の目的ではありませんが、町で子供たち(バハティやリチャードたち)に出会い、彼女のプライベートの時間で、彼らに何かしてやりたいと思ったそうです。そして彼女は空いた時間に子供たちに英語を教えたり、食べ物を与えたり、家に寝かせたり、服を買ってあげたり、プールに連れて行って一緒に遊んだりしていました。一度タンガの海まで彼女の車で子供たちを連れて行ったりもしたそうです。彼女とRashidiたちは、子供たちを通して出会いました。

 彼女は本当に子供たちをかわいがっていて、子供たちも彼女のことがとても大好きです。彼女の子供たちに何かしてあげたいという気持ちはとてもよく伝わってきます。しかし、彼女のやり方には少し問題がありました。

 5月19日(土)、ストリートの子供たちがRashidiの家に遊びに行きたいと言ったので、シリが夕方タクシーで子供たち7人(バハティ・リチャード・ジュマ・ガスパ・シュクール・バカリ・エマニュエル)を連れてきました。その日は子供たちは全員Rashidiの家に泊まりました。

日曜日はシリも休日なので、シリの提案でRashidiの家の子供たち2人(バラカは行かないと言いました)と、泊まった7人の子供たちを連れてプールに行くことになりました。シリが車で子供たちを迎えに行きました。昼過ぎまでたっぷり遊んだ後、子供たちと話をして、ストリートに戻るか、Rashidiの家に行くかを選択させました。シュクール・バカリ・エマニュエルが家に行くと答え、Rashidiが連れて帰りました。他の4人の子供たちは、シリとストリートに戻りました。

 その後アルーシャに行っていた私は、帰ってきてRashidiとEvanceと会い、居ない間の話を聞かせてもらいました。
 まず、エマニュエルがRashidiの部屋に入ってお金を盗み、逃げてしまったそうです。モシの町でも見かけず、行方が分からないそうです。
 その数日後、シュクールが町へ出ていき物乞いをして帰ってきました。Rashidiの家では、勝手に町に行くことも、物乞いすることも許されていません。その時は話をし、次やったら追い出すと約束して許したのですが、数日後、早朝に逃げ出してしまいました。今はモシの町で見かけます。
 そしてずっと学校に通っていたケルビン2人も、その後学校にいかなくなり、夜中に帰ってくるようになり、何度も話し合いをしたものの、戻って来なくなってしまいました。今は2人ともモシの町にいます。
 ですので私がアルーシャから戻ったとき、Rashidiの家にいるのはバラカとバカリの2人だけでした。

そして、シリと上手くいっていないという話を聞きました。

彼女は確かに子供たちが好きで、心から何かしてあげたいと思っています。しかし、彼女が子供たちのためと思ってやっていることは、必ずしも彼らのためになっているとは言えないことです。
  Rashidiの家に子供たちを連れてくるとき、プールに行くとき、ストリートに戻りたいという子供たちを、彼女は車に乗せて帰します。先日は Rashidiの家に戻ると言った子供たちがまだ居るところで、ストリートに残ると言った子供たちに食事を買い与えていました。Rashidiの家に残る子供たちは、どう思うでしょう?ケルビンたちが出ていってしまったのも、彼女に一因が無いとは言い切れません。
 確かに子供たちは愛情に飢えていて、心から慕ってくれている彼女のことを、子供たちはみんな大好きです。しかし、彼女に会うためには、ストリートに残り、自由でなければいけません。施設に行ってしまえば、彼女に好きなときに会いに行くことも、彼女に服や好きな食べ物を買ってもらうことも、彼女の車でどこかに連れて行ってもらうことも出来なくなってしまうのです。

 彼らとシリは話をしたようですが、まだお互いの意見は食い違ったままのようです。彼女も本来の仕事が忙しくなったのもあって、私がアルーシャに行ってから、Rashidiの家にも来なくなってしまったそうです。

 そういう事情もあって、彼らも「彼女は自分のやりたいようにしたいだけで、先のことを何も考えていない」ともらしていました。「見本とならなければならないボクらが、タバコや、お酒を飲んでいたら、注意したって説得力がない。」とも言っていました。彼らも子供たちがストリートに戻っていってしまったことで、不満が高まっていたのでしょう。

子供たちは彼女から愛情を受けることで、人に愛されることを学び、人を愛することを学ぶかもしれません。しかし、彼女もずっとここにいる人間ではありません。彼女が去ったとき、子供たちはどうなるのでしょう?愛情を与えることは子供たちにとって、とても大切なことです。しかし、子供たちをストリートに留めてしまう彼女のやり方は、子供たちの将来を考えてはいないと私も思います。

なぜ、子供たちのために何かしてやりたいという同じ目的を持った人間が、協力することができないのでしょう?私はもったいないと思います。私はもう一度、みんなで集まって話をする機会を持つべきだと思っています。

彼女の行動は、私にとっても戒めとなりました。
 私も、出来る限り、Rashidiの家に残り、勉強する選択をした子供たちとの時間を大切にしようと思いました。ストリートに残った子供たちにも、勉強を教えようと思っていましたが、教えるのはRashidiの家でだけにしようと思います。ストリートに残った子供たちには、将来のことを真剣に考えさせなくてはいけません。彼ら自身で考えさせ、どうするかを決めさせなくてはいけません。そしてそれはストリートに留まることではなく、きちんと教育を受けることなのです。彼らの多くは、簡単な計算も、文章も読むことができません。何人かは、数字も、アルファベットも書けないのです。小さな今は、お金をもらって生きていくことができてしまいますが、大きくなったとき、彼らは必ず生活に困ることになるでしょう。
 彼らとは、時間をかけてでも、しっかりと話をしていこうと思います。本当に彼らがこれからのことを考えれば、家に戻ることを選択できると思っています。

  • posted by naomaru さん
  • 2008-8-12 23:27
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